【聖書ウラ話】 楽園追放

作:中井たかし 

 善悪の木の実を食べてエデンの園を追放になったアダムとイブは、荒野の一本道をのろのろと歩いていました。

「ねえ、アダム。どこ行くの?」

「さあ、ぼくにもわかんないよ。それよりさっきはごめんよ。キミを悪者にしてしまって」

「ううん、いいの。誘った私が悪いんですもの」

「これからは何でも自分たちでしなくちゃならない。お互いに協力していこう」

「ええ。努力して2人の楽園を築きましょう。ねえ、あっちのほうが何だかよさそうよ」

「よし、あっちに行ってみよう」

 2人は枝分かれした道を右に曲がりました。

 遠くから彼らの背中を見ていたヘビのもとに、天から神さまが降りてきました。

「ヘビよ、すまんかったなあ。損な役回りをさせて」

「いえいえ、神さまのためならエンヤコリャですよ」

「おまえのお陰で、これからアダムは勤労の喜びを、イブは出産の感動を得ることになり、幾重にも幸せを重ねていくだろう。あのままエデンの園にいても、彼らは楽かもしれんが、人間の未来を考えるといいことではない。まあ善悪を知ったことでいろいろと問題も起こすだろうが、そうして人間は人間として成長していくものだ。そうなってくれることを願っているよ。さあ、これからの2人に期待しようじゃないか」

 神さまはそう言って目を細めました。

 

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