【聞き違い戦国史】 「山崎の戦い」1582年

作:中井たかし

(明智光秀と羽柴秀吉が交通の要所、山崎の地で激突。明智軍は総崩れとなり、勝龍寺城に敗走する)

 備中高松城を水攻めしていた秀吉が、想像を絶する速さで駆けて来た。態勢が整わないまま、光秀は秀吉を迎え撃つことになった。

 戦況は光秀にとって著しく不利になってきた。光秀は唇を強く噛むほどに苦悶している。

「殿。ここは退却するしか……」

 家臣は進言したが、苦痛のせいで光秀の耳には届かない。
苦悶の正体は痔だった。
収まっていた痔が再び悪化し、戦どころではないのだ。
痛くて堪らない。

光秀は、しまいには「いやだ」と泣き言を口にした。

「しかし、殿。ここは退却しかないかと」

「いやなのだ。痔がイヤなのだ」

「自害、ヤなのは当然のこと。だからこそ、ここは勝龍寺城に一端退却を! 態勢を整え、再度攻撃を仕掛けるのが賢明かと。殿、そうすべきです。いや、それしかない! 皆の者、引けー引けー、退却じゃー」

「おい待て、皆どこに行く? わしは歩くのも辛いんじゃ。おお、イタタタタ」

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