【聞き違い戦国史】「本能寺の変 その壱」1582年

作:中井たかし

(明智光秀が起こした謀反。野望説、怨恨説、黒幕説、四国討伐回避説など諸説入り乱れ、定説はない)

 桂川を渡ったところで、馬上の明智光秀は尻を浮かし、苦悶の表情を浮かべた。

「いかがなされました、殿」
                            
「うむ……実は辛くてたまらん。しかし、耐えねばならぬ。相手は、ほんの、痔じゃ」

「やはり、そこまでお辛かったのでございますか」

「おまえは知っておったのか」

「何年、殿に仕えているとお思いですか。恨みを晴らす時は、今。今こそが、討伐の好機でございます。敵はすぐそこに!」

「うむ。敵か。そうだな、わしにとっては今や一番の敵じゃ。すぐ手の届く場所にありながら
どうにもならん存在と思っておったが、やはりこのまま放ってはおけぬ。切るか」

「殿、よくぞご決断を。では御免」

 家臣は一礼すると、馬を勢いよく走らせた。そして、皆にこう叫んで回った。

「敵は本能寺にあり! 信長の首を取れい」

「おいこら、待て待て。聞き違いじゃー」

 

 

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